「功労賞とは」

3月に行われた生徒会主催「三年生を送る会」では毎年、生徒会主催の演奏会や文化祭などで最も活躍したと1,2年生の生徒会役員が思った3年生の有志団体に「功労賞」が贈られています。今年は男子6人のジャズバンド「691*324」と、女子2人のピアノアンサンブルグループ「たいやき」 の2団体が受賞しました。部活動のない本校でどのような有志活動が行われているのかを皆さんに知っていただくために、この2団体を紹介したいと思います。
功労賞有志団体特集第1弾として、「たいやき」の阿久津幸さん(あくつさち、以下「幸」)と佐藤史帆さん(さとうしほ、以下「史帆」)のお2人にインタヴューをしてみました。時々練習の後に2人でたいやきを食べて帰っていたのでその名前にしたというお2人の、興味深いお話をぜひお楽しみください。

「受賞と活動を振り返って」

ーでは早速ですが、「功労賞」を受賞したときの気持ちを教えてください。


史帆)びっくりでした。まさかもらえるとは思っていませんでした。

幸)私もびっくりしました。男子の団体のパワーが強すぎましたから(笑)。でも、嬉しかったです。


ー2人は「たいやき」という名前の有志団体としては2,3年生の時に「文化祭コンサート」や生徒会主催の「新入生歓迎コンサート」(以下新歓)に出演しましたが、その他、学校主催の演奏会にもたくさん出ていましたよね。


幸)1年生の最後に、ピアノアンサンブルの授業で選ばれて「ピアノアンサンブル演奏会」に出たのが最初でした。2.3年生の時にも授業を取り続けて、「ピアノアンサンブル演奏会」には毎回出演させていただきました。

史帆)2,3年生の時の「室内楽演奏会」もオーディションに合格して出演することができました。3年生の時は「高校・大学合同演奏会」でブラームスの「愛の歌」の伴奏を連弾で弾いたり、区民広場南池袋で開かれた「みみずくフェスタ」にも出演しました。また、冬期講習会の学校説明会の時も中学生の前で演奏することができました。


ー改めて聞くと本当にすごい活躍ですね。2人で演奏するきっかけは1年生の時のピアノアンサンブルの授業ということですが、そこで終わらずに続けていこう思ったきっかけは何だったのでしょうか。


史帆)私が来年もまたやりたいと誘いました。新歓や文化祭も私が誘いました。

幸)室内楽演奏会は私が誘ったと思います。

史帆)そうですね。私は室内楽演奏会のことは知らなかったのですが、幸は先輩から教わって知っていました。

幸)私たちが1年生の時に3年生だった同じ門下の先輩に私は憧れていて、その先輩から室内楽演奏会の存在を教えてもらっていました。
(注 2人が1年生の時の室内楽演奏会はコロナのため中止だったので室内楽演奏会を知らない人が多かった)


ー2人が練習している時の様子を教えてください。


史帆)1年生のころは意見の出し合いで言い争いみたいな感じだったと思います(笑)。お互い意見を譲らなくて、こっちがいいとかあっちがいいとか。1回、最終的に決まらなくて先生に相談しにいったことをよく覚えています。

幸)私は小学校の時に連弾を本気でやったことがあって、高校でもアンサンブルを頑張りたいと入学前から思っていて、結構バシバシ言ってましたね(笑)。求めるものとかやりたいことの理想が高すぎて、相当な量の練習をしましたし、よく話し合いもしました。


ー2人で本当に深め合っていたんですね。


史帆)2,3年生の時で私が印象に残っていることは、ピアノを弾きながら話し合いをするというよりは、話し合いだけの時間もすごく多かったことですね。3年生の室内楽演奏会で私たちが弾いた曲に詩がついていて、その詩をすごく深めあいました。2時間練習室をとったのに1時間半くらい「ここはこういう場面だからこう弾きたい」っていうのを2人で言い合って、例えば「このフレーズは鳥の鳴き声みたいだよね。詩からインスピレーションを受けてるからナイチンゲールだよね。ナイチンゲールの鳴き声ってどんなんだろう」って調べて聞いてみたり、「どんな鳴き声でどんなことを歌ってるのかな」って2人でずっと話し合っていた思い出があります。

幸)挙句の果てには2人で話し合ったことを元に自分で物語を書いてきて、本番前にずっと2人でそれを読んでいました(笑)。


ーそれはすごいですね。阿久津さんは本当にディープな愛を求めていたんですね。


幸)アンサンブルをするときは自分だけで解決していても相手には伝わらないので、言葉にすることによってお互いの音楽の方向性を同じ方向に向かわせることが大事かなって思いました。


ー本当に素晴らしいですね。積極的に言語化することによってお互いの理解と音楽を深めていったんですね。

2人の苦労が染みた楽譜や、楽曲から受けたインスピレーションを元に書かれた詩。
2人の苦労が染みた楽譜や、楽曲から受けたインスピレーションを元に書かれた詩。

「2人だからできること」

ーそんなお2人はお互いのことをどう思っているんですか。


幸)史帆はすごく真面目で、一つのことに対して2倍3倍もの情熱をもって返してくれる人で、史帆じゃなければあのラリーはできなかったと思います。結構頭脳派のところと情熱的なところの両面をもっていて、それが私にとって新鮮でした。曲を作るうえで私たちはちょっとタイプが違うので、その二面性を出せたり、最後まで真面目に取り組めたのも彼女のおかげだと思います。

史帆)本当にすごいんですよ幸は。音楽的にもすごいんですけど、教えるのもすごい上手で私があまり納得いっていない部分もただ単にこうした方がいいんじゃないっていうだけじゃなくて、ちゃんと理由までつけて、これはこうだからこうした方がいいんじゃない、とか、こうしたらうまくいくよって私が納得するまでいつもアドバイスをくれました。あと、私にはない意見がすごくあって、いつも私にはないアイディアを出してくれて、いつも助けてもらっているな思っていました。演奏会のチラシを作るのもすごく上手だし、ステージで一言しゃべる時もいつも適切な言葉を考えてくれて、音楽面だけでなく、人としても尊敬しています。

幸)ありがとうございます(照れ)。


ー2人とも情熱もあり、知性もあるように感じますが、2人の違いみたいなことはありますか。


史帆)同じところを見つけることが難しいくらい違います。

幸)確かに・・・。

史帆)音楽に対する熱意は同じなんですけど、普段の学校生活もいつも一緒にいるというわけではなく、どこかに一緒に遊びにいくというわけでもなく、本当に練習の時だけ一緒でした。

幸)音楽が好きっていうことが共通点で、それ以外は好きな作曲家とか弾く曲も全然違うし、得意なパッセージとかこだわるポイントも全然違いました。でも同じ曲を見ているのに、違う方面から見ているので、1人でやるよりもずっと深くその曲を考えることができたなって思います。


ー観点もアプローチも違った2人だからこそ、2倍も3倍も深めることができたわけですね。2人で長い間、色々な曲に取り組んできたわけですが、長く続けてきてよかったなと思える点はありますか。


幸)アンサンブルを頑張っていって何かにつながるって狙ってやっていたわけではないですが、ひたすらやりたいことを頑張っていたらたくさんのチャンスをいただけたことが長く続けていてよかったことですね。

史帆)全部言われてしまった(笑)。

幸)あとはやっていくにつれ大切にしたいポイントが変わってきました。1年目は曲をどうまとめるかっていうことが私の中で一番重要なポイントだったんですけど、学年が上がるにつれて、それぞれの個性をどうやって生かせるか、ほかの人たちでない私たちにできることは何かということをちょっとずつ考えられるようになったと思います。

史帆)曲選びも私たちにしかできないことっていうか、私たちならではという曲を幸が選んでくれて、自分たちらしい演奏ができるようになったかなと思います。


ー曲はどんなふうに選んでいたんですか?


幸)曲は基本的には私が選んでいました。私は本当に世界中の2台ピアノの曲を全部聴いたんじゃないかってくらい聴きましたが(笑)、選曲する時は自分が弾きたい曲ではなくて、史帆と弾いたらこの曲はもっと活きるかなみたいに相手ベースで考えられたので、自分が普段弾かない曲にチャレンジできたかなって思います。

史帆)本当にいつもいいなって思う曲を選んでくれたんですが、それでもいつも私よりに選んだってわけではなく本当に私たち2人に合う曲を選んでくれて、私にとっても普段選ばない曲を選んでくれたり、幸の選曲は本当に神がかっていました(笑)。


ー2人の活動の中で難しさみたいなものはあったんですか。


史帆)3年生の秋はちょっとやりすぎましたね。

幸)アンサンブルは分量が難しいなって思いました、やればやるほどうまくなれるとは思うんですけど、練習の時は話し合いも必要ですし、一人でないから自分に甘くということもできないし、時間とエネルギーを使いすぎてソロとの兼ね合いに難しさを感じました。

史帆)でもアンサンブル活動を通じて私の音も幸の音もすべて聴いて、すべての音に気配りをするということの大切さを知ったので、ソロの曲に取り組むときにも生かすことができましたね。


ー3年間のピアノアンサンブルの授業で印象に残っていることは何ですか。


幸)自分が思っているよりも大げさに弾いていいということを学びました。やっぱり形態が大きい分、4つの手があってベースが1つしかなかったら、ソロで2つの手で弾くよりはしっかり弾かないと聞こえないということですね。あと、ピアノアンサンブルの授業ではないんですが、金子三勇士さんの芸術特別講座で私たち抽選に当たって少しレッスンを受けられたんですけど、その時に「ソロ対ソロ」でいいとすごく言われました。私はそれまで自分が少しマイナス方向というか、ちょっと引くことでまとめようとしていたんですけど、自分を違う方にプラスをすれば曲の中でバランスを保つことができるということを知ることができました。

史帆)私はやっぱり練習の時に、1つの曲に対して何時間も2人で話し合った時間が一番印象に残っています。授業ではレポートを書くことが多くて、曲について深めるという点では最初のころは幸がよくやってくれたんですけど、私もそれに影響を受けて、この曲はどういう場面でどういう気持ちで作られたんだろうというのをすごく意識するようになりました。

幸)本番では一番最後のピアノアンサンブル演奏会が一番印象に残っていますね。今までは曲に寄り添って弾きたいと思ってお互いに弾いていたんですけど、最後の本番だけはこれが最後だと思いながらこの瞬間を楽しみたいと思って、一音一音をかみしめて逃さないように演奏しました。最後に拍手をもらった時は、目の前にいた先生方と、同じ舞台にいた史帆への感謝の気持ちがこみ上げてきました。

幸せも辛さも共に過ごしていく中で、2人の絆は強く結ばれました。
幸せも辛さも共に過ごしていく中で、2人の絆は強く結ばれました。

「これからと後輩に向けて」

ー大学に行ったらどうしようと思っていますか。


幸)私は少しやり切ったという思いが強いので、とりあえず一旦ソロにシフトしたいなと思っています。色々な経験を生かして前へ進めればいいなと思っています。

史帆)私はけっこう幸とアンサンブルをやりたい派なんですけど(笑)、大学1年生の時はピアノアンサンブルの授業がないと聞いているので一旦ソロに専念したいと思っています。


ー2人は高校ではいつも一緒にいたわけではなく、それぞれ別に友達がいて、「たいやき」以外のアンサンブル活動にも積極的でした。そこでの学びを持ち帰ってきて「たいやき」を更にパワーアップさせていたと思います。大学でも新しい友達を作って、新しい学びをして、大学4年生くらいでまた一緒に弾いてみようよということになったらまた違う魅力が生まれるかもしれませんね。では、最後に後輩に向けて何かメッセージをお願いします。


史帆)やりたいことはやる!

幸)とことんやりたいことを突き進めていけば何かにつながるかもしれないし、結果としてつながらなくても自分の中に残るものは必ずあります。私たちがそうだったので、そういう気持ちでいてくれたらな、って思います。

史帆)何でも挑戦していってほしいです。

幸)失敗を恐れない、みたいな。

史帆)これからの自分に言いたい(笑)。


ー後輩たちへ、そして未来の自分たちへのメッセージだったわけですね。今日はありがとうございました。


幸 & 史帆)ありがとうございました!

功労賞の副賞で受け取ったお揃いのたいやきキーホルダーと、高3の新歓に出演した際のポスター(阿久津さん作)と、満面の笑顔の2人。
功労賞の副賞で受け取ったお揃いのたいやきキーホルダーと、高3の新歓に出演した際のポスター(阿久津さん作)と、満面の笑顔の2人。

「たいやき」の演奏 ~2022年度室内楽演奏会編~

インタヴューに登場した詩のついた楽曲、S.ラフマニノフ / 組曲 第1番 「幻想的絵画」 op.5 より 2.夜と愛と 4.復活祭をお楽しみください。